当サイトの電話型の記事では、オレオレ詐欺・還付金詐欺・ニセ警察詐欺の3つをまとめて整理しました。この記事では、そのうちの一つ「オレオレ詐欺」だけを取り上げて、もう少し掘り下げます。
電話型の中でもいちばん古い手口でありながら、令和8年になっても被害額は減っていません。なぜここまで息の長い手口になったのか、名前の由来から最新の数字まで、順番に見ていきます。
名前の由来。「オレ、オレ」という、たった二文字の口癖から生まれました
「オレオレ詐欺」という呼び方が広まったのは、平成15年(2003年)2月ごろとされています。国立国会図書館のレファレンス協同データベースによると、1999年8月ごろから2002年12月ごろにかけて「俺、俺」と身内を装って現金を振り込ませていた事件を2003年2月に検挙した鳥取県警米子署が、この手口を「オレオレ詐欺」と称したのが初出とされています(出典:国立国会図書館 レファレンス協同データベース・朝日新聞2004年11月26日付記事を基にした記録)。その後、この呼び方は各地の警察に広がっていきました。
名前の由来は単純です。犯人が電話口で自分から名乗らず、「オレだけど」「オレオレ」とだけ言う。すると、電話を受けた側が「あ、もしかして〇〇(息子や孫の名前)?」と、こちらから名前を口にしてしまう。犯人はその名前をそのまま使って、あとの会話を続けていくのです。
「風邪をひいて声が変わった」という言い訳がよく使われるのも、この仕掛けとセットです。声が違うことへの疑問を先回りしてつぶしておくことで、名前を自分から名乗るリスクを避けながら、違和感まで消してしまいます。名乗らせるのではなく、名乗らせてしまう。この小さな誘導が、オレオレ詐欺という手口の出発点です。
平成15年中の認知件数は6,504件、被害総額は約43億2,000万円にのぼったとされています(出典:国立国会図書館 レファレンス協同データベース)。翌年の2004年、警察庁はこの手口を含む一連の詐欺を「振り込め詐欺」という名称でくくり直しました。今も統計上は特殊詐欺・振り込め詐欺という枠組みが使われていますが、「オレオレ詐欺」という呼び方は20年以上たった今も、当時のままの言葉で定着しています。
令和8年、オレオレ詐欺の被害はむしろ増えています
「もう手口として使い古されているのでは」と思われるかもしれません。ですが、警察庁が発表した令和8(2026)年上半期の暫定値によると、オレオレ詐欺の被害額は68.9億円で、前年同期比で5.5億円増えています(出典:警察庁 SOS47 令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について)。
さらに気になるのが、既遂1件あたりの被害額です。同じ資料によると、オレオレ詐欺が実際に成立してしまった場合の被害額は、平均で380.7万円にのぼります。これは「ちょっとしたお小遣いを取られた」という金額ではありません。老後の生活費や退職金そのものが、電話1本で動いてしまう規模です。
当サイトの電話型の記事でも紹介したとおり、特殊詐欺全体では令和8年上半期だけで認知件数22,031件、被害総額1,816.2億円という規模になっています。オレオレ詐欺は、この中でも金額の面で無視できない位置を占め続けている、20年選手の「古典」であり「現役」の手口なのです。
詐欺は「ひとりの思いつき」ではなく、分業の犯罪です
オレオレ詐欺の被害を防ぐうえで知っておいていただきたいのが、この手口の多くが組織的に行われているという点です。報道や警察の公表資料では、次のような役割分担がしばしば紹介されています。
- 指示役:全体の指揮をとる立場。実行役の前には姿を見せないことが多いとされます
- かけ子:実際に電話をかけて、家族になりすます役
- 受け子:現金やキャッシュカードを受け取りに、自宅などへ向かう役
- 出し子:受け取ったキャッシュカードなどを使って、ATMからお金を引き出す役
受け子・出し子・指示役という呼び方は、警察庁の資料でも使われている呼称です。指示役は受け子等に対して犯行の準備・実行・後始末など様々な指示を行う役割、受け子・出し子は被害者宅を訪れたり現金を引き出したりする現場実行犯として整理されています(出典:警察庁 令和3年警察白書「組織的に敢行される特殊詐欺に対する警察の取組」)。電話をかけて家族になりすます役を指す「かけ子」という呼び方も、捜査発表や報道で広く使われています。当サイトの週次記録でも、かけ子を紹介した容疑で逮捕者が出た事案を取り上げたことがあります。
役割を分けているのは、一人が捕まっても全体の実態がつかまれにくくするためだと考えられています。電話をかけてきた相手は、その先に何人もの分業体制を抱えた「組織」であることが多い。個人の判断や勢いでかけてきているわけではない、という前提を持っておくと、電話口での身構え方が変わってきます。
電話の「型」を、フェーズごとに見てみます
電話型の記事でも触れましたが、オレオレ詐欺の電話には共通する流れがあります。ここでは、それぞれの場面で家族が実際にできる問いかけを添えて、もう一歩具体的に整理します。
フェーズ1:接触。名乗らず、相手に名前を言わせる
「オレだけど」「もしもし、オレ」と切り出し、こちらから名前を引き出そうとします。ここで有効なのは、台本にない質問を返すことです。「今どこにいるの?」「今日、どこかに出かける予定だったよね?」など、事前に用意された筋書きにない、日常の具体的な質問には答えにくいものです。
フェーズ2:トラブルの提示。緊急性を演出する
「会社のお金を使い込んだ」「電車の中にかばんを忘れて、中に大事な書類が入っていた」など、今すぐ対応しないといけない体裁のトラブルが語られます。ここでの合図は「今日中に」「すぐに」という言葉です。急かされたら、それ自体を疑うサインだと捉えてください。
フェーズ3:口止め。相談する時間を奪う
「会社に知られたくない」「他の家族には内緒にしてほしい」と、周囲に相談させない方向に話を進めます。ここで一度、電話を切ることが最大の防御になります。「いったん切って、本人の携帯にかけ直すね」と伝えるだけで、たいていの詐欺は成立しなくなります。
フェーズ4:受け渡し。現金・カードを移動させる
「会社の人が取りに伺います」「指定の場所に来てください」など、現金やキャッシュカードを他人に渡す、あるいは移動させる指示が出ます。理由が何であれ、家族以外の第三者にお金やカードを渡すという状況そのものを、立ち止まって考えるきっかけにしてください。
本人への注意喚起だけでは、なぜ足りないのか
電話型の記事でも述べたとおり、詐欺の被害に遭った方の多くは、オレオレ詐欺という手口の存在自体は知っていたと言われています。知識として知っていることと、実際の電話口でとっさに判断できることは、別の力です。
だからこそ、本人の注意力だけに頼らない「仕組みの備え」が大切になります。留守番電話を常時オンにする、国際電話の着信を休止する、家族の合言葉を決めておくといった備えは、電話型の記事で詳しく紹介しています。ここでは、もう一つの備えとして、離れて暮らす家族の「見守り」について触れておきます。
※この段落にはアフィリエイトリンクを含みます。
頻繁に実家を訪ねられない場合、見守りサービスや訪問介護のような「日常の接点を代わりに持ってくれる仕組み」を取り入れることも、選択肢の一つです。日々の様子を誰かが見てくれているというだけで、「最近、変な電話来てない?」と声をかける機会が自然に増えます。見守りサービス・みまもりGPSや、訪問介護・生活支援サービスといった仕組みも、詐欺対策という文脈であらためて検討してみる価値があります。
まとめ:20年前と同じ言葉が、今も使われ続けている理由
「オレ、オレ」と名乗らずに相手に名前を言わせる。この2003年当時とほとんど変わらない仕掛けが、令和8年の今も現役で使われ続けています。手口が古びないのは、犯人側が工夫をやめていないからというより、「家族の緊急事態には応えたい」という、私たちの側のごく自然な気持ちを突いてくる仕掛けだからだと思います。
名前の由来を知ること自体に、詐欺を防ぐ力はありません。ただ、「オレオレ」というくだけた響きの裏に、組織化された分業の犯罪があるという実態を知っておくことは、電話口で身構える理由になります。この記事が、そのきっかけになれば幸いです。
還付金詐欺・ニセ警察詐欺を含めた電話型全体の手口や、留守番電話・国際電話休止といった具体的な備えは、電話型の記事で詳しく整理しています。あわせてご覧ください。
(当サイトは個人が運営する情報サイトであり、警察・自治体などの公的機関とは関係ありません。記載内容は警察庁等の公表資料をもとに整理したものです。実際の被害に関するご相談は、警察相談専用電話「#9110」など公的な窓口へお願いします。)

コメント