当サイトの電話型の記事では、オレオレ詐欺・還付金詐欺・ニセ警察詐欺の3つをまとめて整理しました。この記事では、そのうちの一つ「ニセ警察詐欺」だけを取り上げます。
実は、ニセ警察詐欺は令和8年から、統計の数え方そのものが変わった手口です。まずそこから見ていきます。
令和8年から、「独立した手口」として数えられるようになりました
警察庁は、令和8年の特殊詐欺統計を発表するにあたり、手口の整理方法を変更しました。被害が急増している「ニセ警察詐欺」を、それまでの分類から切り離し、独立した手口として新たに位置づけたのです(出典:警察庁 SOS47 令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について)。
これまでニセ警察詐欺は、オレオレ詐欺や預貯金詐欺といった他の手口の中に紛れ込む形で統計上扱われていました。それをわざわざ独立させたということは、それだけこの手口の被害が無視できない規模になった、ということです。当サイトが「手口の進化を記録する」ことをテーマにしているのは、まさにこうした変化を追いかけたいからです。
件数は減っているのに、被害額は増えている
令和8年上半期の暫定値によると、ニセ警察詐欺の認知件数は4,466件(前年同期比-296件、-6.2%)と、件数だけ見れば減っています。ところが被害額は507.9億円(同+108.9億円、+27.3%)と、大きく増えているのです(出典:同上)。
件数が減っているのに金額が増える。一見矛盾しているようですが、理由ははっきりしています。既遂1件あたりの被害額が1,163.9万円(同+318.5万円、+37.7%)と、大きく押し上がっているためです。警察庁の資料でも、SNS型投資詐欺とならんで、ニセ警察詐欺が「既遂1件当たりの被害額を押し上げている主たる要因」と分析されています。
つまり、被害に遭う人の数そのものは減少傾向にあるものの、いったん被害に遭ってしまうと、1件あたりの被害額が以前より大きくなっている。手口が「広く浅く」から「狭く深く」に変化している可能性がある、ということです。
もっとも狙われているのは、70代です
年代別の内訳を見ると、もっとも被害が多いのは70代で、869件(同+295件、+51.4%)・151.6億円(同+44.7億円、+41.8%)です。件数・金額ともに、前年同期からの伸び率が突出しています。次いで60代が666件・116.3億円、30代が664件・34.4億円と続きます(出典:同上)。
電話型の記事でも触れたとおり、ニセ警察詐欺は「あなたの口座が犯罪に使われている」「逮捕状が出ている」といった、身に覚えのない告知で相手を動揺させる手口です。社会的な立場や信用を大切にしてきた世代ほど、こうした告知に強く反応してしまう傾向があるのかもしれません。70代の伸び率の高さは、この手口が特に効きやすい層をあらためて示していると言えます。
「振込」から「暗号資産」へ、お金の流れが変わっています
被害金の受け渡し方にも、変化が見られます。振込型(銀行口座への振込)は2,930件・256.2億円で、ニセ警察詐欺全体に占める割合は件数65.6%・金額50.4%ですが、前年同期からは件数・金額とも減少しています(件数-18.0ポイント、金額-16.5ポイント)。
一方で急増しているのが、暗号資産(仮想通貨)を送らせる手口です。暗号資産送信型は620件(同+354件、+133.1%)・110.3億円(同+60.8億円、+122.8%)と、件数・金額ともに2倍以上に伸びています(出典:同上)。振込型における暗号資産振込も合わせると、ニセ警察詐欺全体のうち、実質的に暗号資産が絡む被害の割合は、件数で15.3%、金額で24.2%にのぼります。
暗号資産は、いったん送金されると銀行の振込のように後から凍結・取り戻しをすることが難しく、追跡もしにくいとされています。犯人側にとって「足がつきにくい」受け取り方に移っている、という見方ができます。「還付金や返金の話で、暗号資産(ビットコインなど)を要求された」という場合も、詐欺を強く疑ってください。
接触手段のほぼ全ては、今も電話です
手口の入り口についても触れておきます。ニセ警察詐欺で最初の接触に使われたツールは、電話が4,385件と、全体の98.2%を占めています(出典:同上)。SNS・ネット型の詐欺のようにInstagramやLINEから始まるケースは、この手口ではほとんどありません。「見知らぬ番号からの電話」という、もっとも古典的な入り口が、いまも主戦場だということです。
そのうち携帯電話にかかってきたケースは2,580件と、電話全体の58.8%を占めます。固定電話だけでなく、スマートフォンに直接かかってくるケースも多いということは、若い世代・現役世代であっても油断はできないということを意味します。
見分け方は、電話型の記事で紹介した内容がそのまま有効です
手口の細かい流れや見分けるポイントについては、電話型の記事で詳しく整理しています。ここでは要点だけ振り返ります。
- 本物の警察が、電話やビデオ通話でお金や暗号資産を要求することはありません
- 「+」から始まる国際電話番号や非通知でかかってくる「警察」は、本物ではありません
- 少しでも不安に感じたら、いったん電話を切り、警察相談専用電話「#9110」に自分からかけて確認してください
今回のデータを踏まえると、もう一つ付け加えたいポイントがあります。それは「暗号資産を持っているか、持てる状態にあるか」を聞かれた時点で、強く警戒するということです。証券口座や暗号資産の取引所口座を持っている方、あるいは「暗号資産の買い方を教える」といった話が出てきた場合は、その時点で詐欺を前提に考えてください。
「本物の警察手帳を見せられた」と言われても
電話型の記事でも触れましたが、ニセ警察詐欺の中には、ビデオ通話で「警察手帳」や「逮捕状」らしき画像を見せて信じ込ませる手口があります。ここで知っておいていただきたいのは、画面越しに見せられた身分証や書類が本物かどうかは、その場では判断できないという現実です。今の時代、精巧な偽物の画像を用意することは技術的に難しくありません。
「本物っぽかったから信じてしまった」というのは、判断力が足りなかったわけではなく、そもそも画面越しの確認では見分けようがない、というのが実情です。だからこそ、見た目で判断しようとせず、「いったん切って、自分で調べた窓口にかけ直す」という行動そのものを機械的に行うことが、唯一と言っていい対策になります。電話で伝えられた番号ではなく、警察相談専用電話「#9110」や、自分でインターネット検索した管轄警察署の代表番号にかけてください。
「暗号資産」という一言を、家族のルールにしておく
ニセ警察詐欺は電話型の中でも被害額の伸びが大きい手口なので、電話型の記事で紹介した留守番電話の常時オンや国際電話の着信休止に加えて、次のことも意識しておくと安心です。
- 「暗号資産」「ビットコイン」という言葉が出た時点で、家族に電話する。証券や暗号資産の取引経験がある方ほど、話を信じ込みやすい面があります
- 普段から、家族間で「警察を名乗る電話が来たら、まず私に電話して」と伝えておく。とっさの場面ほど、決めておいたルールが力を発揮します
※この段落にはアフィリエイトリンクを含みます。
離れて暮らすご家族の場合、日常的な連絡の機会そのものが備えになります。見守りサービス・みまもりGPSのような仕組みを取り入れておくと、「最近、変な電話来てない?」と自然に聞ける関係を保ちやすくなります。
まとめ:数は減っても、油断できない理由がここにあります
ニセ警察詐欺は、令和8年から独立した手口として数えられるようになったばかりの、いわば「新しい統計上の顔」を持つ手口です。件数自体は減少傾向にあるものの、1件あたりの被害額は大きく増え、受け渡し方法も暗号資産へとシフトしています。数字の表面だけを見て「減っているなら安心」と判断するのは早計だということが、今回のデータからよく分かります。
「もし警察を名乗る電話がかかってきたら、暗号資産の話が出た時点で切る」。これだけでも、ご家族との会話の中で共有していただければと思います。
オレオレ詐欺・還付金詐欺を含めた電話型全体の手口や、留守番電話・国際電話休止といった備えは、電話型の記事で詳しく整理しています。あわせてご覧ください。
(当サイトは個人が運営する情報サイトであり、警察・自治体などの公的機関とは関係ありません。記載内容は警察庁等の公表資料をもとに整理したものです。実際の被害に関するご相談は、警察相談専用電話「#9110」など公的な窓口へお願いします。)
NEWSLETTER
最新の詐欺手口を、週1回メールでお届けします
新しい手口の解説記事や、その週に報じられた詐欺事件のまとめを無料で配信します。ご家族への注意喚起にもお使いください。
運営:詐欺手口アーカイブ(info@sagi-teguchi-archive.com)。メール内のリンクからいつでも配信停止できます。


コメント