日本年金機構や年金事務所を名乗る電話・訪問・メールが本物かどうかは、「日本年金機構がしないと明言していること」を求められたかどうかで見分けられます。日本年金機構は、電話や訪問で口座番号や預貯金額を聞くこと、ATMの操作を指示すること、LINEで手続きを案内すること、手続きに手数料を取ることは、いずれもないと公表しています。この記事では、日本年金機構自身が出している注意喚起から、実際にあった手口と、見分け方を整理します。年金を受け取っている親と、年金の話をするきっかけにしてください。
日本年金機構が「しない」と言っていること
日本年金機構は、機構や年金事務所の職員を装った電話・訪問・メールについて、繰り返し注意を呼びかけています。その中で、職員が「しない」と明言していることを、ページごとに整理しました。
| 日本年金機構がしないこと | 出典(日本年金機構のページ) |
|---|---|
| 電話や訪問で、預貯金額や口座番号、職業や家族構成などの個人情報を聞く | 不審な電話や訪問にご注意ください |
| 銀行口座番号や振込先を聞く | 同上 |
| ATMの操作や現金の振込みを指示する | 同上 |
| 自動音声ガイダンスで、年金の支給停止や差し止めを案内する | 同上 |
| 電話や訪問での質問に答えないことを理由に、年金の支給を差し止める | 同上 |
| 公的年金の手続きや年金証書の再発行で、手数料を取る(職員が手続きを代行することもない) | 同上 |
| LINEで手続きを案内する(公式のLINEアカウントは存在しない) | 同上 |
| メールで口座番号を尋ねる、メールで支払いを促す | 不審なメール・SMSにご注意ください |
出典:日本年金機構「日本年金機構の職員や委託事業者などと称して、現金を詐取する「不審な電話や訪問」にご注意ください」「日本年金機構を装った不審なメール・SMSにご注意ください。」
電話でも、訪問でも、メールでも、このどれかを求められた時点で、本物ではないと考えてかまいません。
電話で来る手口。「支給が止まる」「還付金があります」
日本年金機構が紹介している電話の事例には、年金を「止める」と脅すものと、お金が「戻る」と誘うものがあります。
- 自動音声で「年金の支給が止まる」:自動音声ガイダンスで日本年金機構や年金事務所を名乗り、「書類の提出確認が取れないため、手続きしないと年金の支給が止まる」などと流して、ダイヤル操作や折り返しの電話を促すもの。機構は、自動音声で支給停止などを案内することはないとしています。
- 質問に答えなければ、支給を差し止めると言う:職員を名乗り、年齢や預貯金額、家族構成を教えなければ年金の支給を差し止めると言うもの。
- 「保険料の納めすぎによる還付金があります」:「保険料の納めすぎによる還付金があります」「給付金が戻るので手続きするように」などと言って近くのATMに行かせ、銀行名や口座番号を聞き出したうえで、現金を振り込ませたもの。
- 指定のLINEアカウントを登録させる:年金事務所の職員を名乗り、「保険料還付金の手続きについて連絡をするため、指定のLINEアカウントを登録してほしい。」などと、機構になりすましたLINEの登録を指示するもの。
出典:日本年金機構「日本年金機構の職員や委託事業者などと称して、現金を詐取する『不審な電話や訪問』にご注意ください」(上記)
日本年金機構は2024年(令和6年)3月にも、こうした電話の問い合わせが増えているとして注意を呼びかけ、国際電話(+1や+44などから始まる番号)から自宅の固定電話にかかってくる事例が多く確認されていると書いています(出典:日本年金機構「【ご注意ください】日本年金機構を装った不審な電話に関するお問い合わせが増えています」)。機構は、国際電話からの電話の場合は特に注意するよう呼びかけています。見覚えのない国際電話への対処は、知らない番号から電話が来たら。怪しい電話番号への対処法まとめで整理しています。
「還付金がある」と言ってATMへ行かせる手口そのものについては、還付金詐欺の記事で、警察庁の統計とあわせて掘り下げています。
家に来る手口。身分証と、その場の領収証書で見分けます
電話だけではなく、職員を名乗って家に来る事例もあります。日本年金機構が紹介しているのは、次のようなものです。
- 職員を名乗る男性が、国民年金保険料を集金に来るので毎月現金を払っていたが、集金に来なくなったので年金事務所に聞いたところ、職員が集金に行った事実はなかった。
- 年金事務所の職員を名乗る男性が家に来て、「滞納している保険料を支払わないと差押えする」と言い、現金を払ってしまった。後日送ると言われた領収書が届かず、年金事務所に聞いて詐取だと分かった。
日本年金機構は、訪問について次のように説明しています(出典:同上)。
- 公的年金について電話や訪問をすることがあるのは、日本年金機構と、機構が業務を委託している事業者だけ
- 職員や委託事業者が訪問するときは、必ず日本年金機構が発行した写真付きの身分証明書を持っていて、提示する
- 委託事業者など、職員以外が訪問で現金を預かることはない
- 職員が家に来て現金を預かる場合は、その場で「領収証書」を発行する
「領収書は後で送ります」と言われたら、その時点でおかしいと気づけます。身分証を見せてもらえないときも、お金は渡さないでください。
メール・SMSで来る手口。差押え、マイナンバー、控除証明書
日本年金機構は、機構を装ったメールやSMSの例も、文面つきで公開しています(出典:日本年金機構「日本年金機構を装った不審なメール・SMSにご注意ください。」)。紹介されているのは、たとえば次のようなものです。
- 年金を払い戻すという名目:機構のロゴを使い、「日本年金機構年金払戻管理局」「払戻返金部門」など機構に存在しない部署を名乗って、年金の残金を振り込むとして、名前や口座番号を返信させようとするもの
- 差押えの予告:件名「【重要】差押予告通知書(最終通知)」などで、国民年金保険料が未納だから財産を差し押さえると言い、リンクからキャッシュレス決済の送金画面に誘導するもの
- マイナンバーの画像提出:マイナンバーの登録が未完了だとして、マイナンバーカード(両面)の画像をアップロードさせようとし、ねんきんネットの偽のログイン画面に誘導するもの
- 控除証明書の不足資料:件名「社会保険料控除証明書の発行に伴う不足資料提出のお願い」などで、本人確認資料が足りないとして、偽のログイン画面に誘導するもの
本物かどうかを見分ける方法として、日本年金機構は次の点を挙げています。
- 日本年金機構からのメールは、送信者のアドレスが「xxx@xxx.nenkin.go.jp」になっている。ただし、表示上のアドレスを偽装している場合もある
- リンク先のアドレス欄が「https://xxx.nenkin.go.jp/」になっているか。「go.jp」の後ろが「/」であることを確かめる(「nenkin.go.jp.xxx」のように偽装している場合がある)
とはいえ、アドレスの見分けは慣れていないと難しいものです。メールやSMSのリンクは開かない、を基本にしてください。届いてしまった詐欺メールの通報先は、詐欺メール・迷惑メール、どこに通報すればいいのか。5つの窓口をまとめました。にまとめています。
「国民年金機構」「給付センター」は、存在しない名前です
日本年金機構は、機構を装った電話などで、次のような紛らわしい名前が使われていることを確認していると公表しています(出典:日本年金機構「日本年金機構を装った不審な電話やメール・SMS、偽サイトや偽のSNSアカウントにご注意ください。」)。
- 国民年金機構
- 日本年金機構特別窓口
- 保険年金事務所
- 国民年金センター
- 給付センター
どれも、本物の「日本年金機構」「年金事務所」に一文字足したり、言い換えたりした名前です。電話口でとっさに聞くと、本物と区別がつきません。名前が少しでも違うと感じたら、それだけで疑う理由になります。
怪しいと思ったら、自分で調べた番号の年金事務所へ
日本年金機構は、怪しいと感じたときの対応として、次のように案内しています(出典:前掲の日本年金機構「日本年金機構の職員や委託事業者などと称して、現金を詐取する『不審な電話や訪問』にご注意ください」)。
- 即答を避け、相手の名前や所属、電話番号を確認して、いったん電話を切る
- 口座番号などの個人情報を話したり、現金を払ったり、振り込んだりしない
- 近くの年金事務所に問い合わせる
このとき、相手が教えてきた電話番号にかけ直してはいけません。その番号の先にいるのも、同じ相手かもしれないからです。年金事務所の番号は、日本年金機構の公式サイトにある「全国の相談・手続き窓口」で、自分で調べてください(相手の番号にかけ直さない、という点は、この記事としての補足です)。
離れて暮らす親に、伝えておきたい3つのこと
年金を受け取っている親にとって、「年金が止まる」「還付金があります」という話は、他人事ではありません。だからこそ狙われます。全部を覚えてもらう必要はないので、次の3つだけ、電話のついでに伝えておくのがおすすめです。
- 年金事務所は、ATMに行かせたり、口座番号を聞いたりしない
- 年金事務所は、LINEで連絡してこない
- 家に来たら、写真付きの身分証を見せてもらう。お金を払ったら、その場で領収証書をもらう
電話で始まる詐欺全体の手口は、電話で始まる詐欺の手口を、家族の目線で整理した記事にまとめています。宅配便やカード会社など、身近な名前をかたるほかの手口は、なりすましメール・偽サイトの手口をまとめた記事で整理しています。
まとめ:年金機構が「しないこと」を先に知っておく
- 日本年金機構は、電話や訪問で口座番号・預貯金額・家族構成を聞かない、ATMの操作を指示しない、LINEで案内しない、手数料を取らない、と公表しています。
- 電話では、自動音声の「支給が止まる」、国際電話からの「還付金がある」が確認されています。
- 訪問なら、写真付きの身分証と、その場で発行される領収証書で見分けます。
- メールやSMSは、差押え・マイナンバー・控除証明書などを口実に、偽のサイトへ誘導します。リンクは開かないでください。
- 「国民年金機構」「給付センター」などは、存在しない名前です。
- 怪しいと思ったら、いったん切って、自分で調べた番号の年金事務所に確かめてください。
(当サイトは個人が運営する情報サイトであり、警察・自治体・日本年金機構などの公的機関とは関係ありません。この記事は、日本年金機構が公表している注意喚起をもとにした整理です。年金の手続きについては、お近くの年金事務所にお問い合わせください。)
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