これまでの記事は、警察庁や金融庁などの公表資料をもとに、詐欺の手口を整理してきました。この記事は少し毛色が違います。当サイトの運営者「ふふ」自身が、電話を使う仕事をしている中で日々感じていることを、コラムとして書いておきます。
「詐欺じゃないですよね?」と聞かれる瞬間
私は本業で、電話を使った営業の仕事をしています。フリーダイヤルや、050から始まるIP電話の番号から、こちらから発信することもあります。そういう仕事をしていると、たまに言われるんです。「詐欺じゃないですよね?」と。
もちろん、こちらには何のやましいこともありません。正式な商品・サービスの案内で、名乗るべき会社名も名乗り、聞かれれば答えられることしか話していません。それでも、フリーダイヤルやIP電話からいきなり電話がかかってくるという状況そのものが、今の時代では警戒される理由になり得るのだと、その一言のたびに実感します。
想像してしまう、あの光景
「詐欺じゃないですよね?」と言われた瞬間、頭に浮かぶのは、海外のどこかの雑居ビルで、何人もの人が机に何本もの携帯電話を並べて、次々に日本へ電話をかけている光景です。実際に見たことがあるわけではありませんが、ニュースやこのサイトで扱ってきた手口を通して、そういうイメージが自然と浮かぶようになりました。
自分が今かけている電話と、その光景でかけられている電話は、目的も中身もまったく別物です。それでも、受け取る側からすれば「知らない番号からの電話」という点では同じに見えてしまう。この非対称さが、今の電話営業という仕事を、以前より難しくしているように思います。
疑われても仕方ない、という自覚
正直に言うと、「詐欺じゃないですよね」と聞かれること自体を、責める気にはなれません。むしろ、そう聞いてくれる人の方が、自分の身を守れている人だと思います。何のやましいこともないからこそ、こちらの側にも「日頃の行動で潔白を証明する」責任があると感じています。名乗りを曖昧にしない、聞かれたことに正直に答える、しつこく食い下がらない。特別なことではありませんが、こうした積み重ねでしか、電話の向こうの人に「大丈夫だ」と伝える方法はないのだと思います。
一発目の電話に出てくれる人へ
営業の電話をかけていて実感するのですが、知らないフリーダイヤルやIP電話の番号に、一発目からきちんと出てくれる方は、今の時代では決して多くありません。そういう方がいてくれるからこそ、電話営業という仕事が成り立っている面もあり、本当にありがたい存在です。
ただ同時に、少し複雑な気持ちにもなります。知らない番号にすぐ出るというのは、ある種の性格や習慣によるものだと思いますが、その「出やすさ」自体が、詐欺の電話に対しても同じように働いてしまう可能性があるからです。正規の営業電話と詐欺の電話は、受け取る側からは最初、同じ「知らない番号からの着信」にしか見えません。
「要件を吹き込んでください」という進化
私は約10年前から電話営業の仕事をしていますが、この数年で明らかに変わったと感じることがあります。電話をかけると、本人が出る前に「ご用件をお話しください」というアナウンスに応対することが、目に見えて増えました。Google Pixelに搭載されている「通話のスクリーニング」という機能です。電話がかかってくると、本人の代わりに通話アシストが応答して発信者の名前・用件を尋ね、その音声をリアルタイムで文字に変換して画面に表示してくれます。相手はその文字を見てから、電話に出るか、切るか、判断できる仕組みです。
営業をかける立場からすると、正直やりづらくなりました。用件を機械相手にきちんと話さなければ、そもそも本人につながりません。ですが、身を守る側の仕組みとしては、これは非常に理にかなっていると思います。詐欺の電話は、用件を正直に、はっきりと話せば話すほど不利になります。「有料サイトの未納料金が」「口座が不正利用されている可能性が」といった話を、文字起こしされる前提できちんと吹き込む詐欺師は、まずいないはずです。声だけで一瞬で信じ込ませようとする手口にとって、「文字として残る・後から読み返せる」という状態そのものが、大きな抑止力になるのだと思います。留守番電話の文字起こしも同じで、内容を開く前に読んで判断し、怪しければ再生せずに消す、ということができます。知らない番号にすぐ出てしまう性格の方や、ご高齢のご家族には、こうした機能を先に設定しておいてもらうことも、有効な備えの一つだと思います。
私のスマホにも、ニセ警察の音声電話がかかってきます
実際、私自身のスマホにも、「警察です」というような機械音声の電話がかかってくることがあります。もちろん出ません。当サイトのニセ警察詐欺の記事で紹介しているとおり、こうした手口は令和8年上半期も高い水準で被害が続いている手口です。営業の仕事で電話をかける側にいるからこそ、「知らない番号には出ない」という選択肢が、実はもっとも確実な自衛策なのだと、逆の立場から強く感じます。
かける側も、受ける側も、自分を守る時代
私は営業の電話をかける立場として、「詐欺ではない」と日々の行動で示す責任があると思っています。一方で、電話を受け取る側にも、同じくらいの自衛が必要な時代になってしまいました。知らない番号にはすぐに出ない。出てしまっても、少しでも違和感があればすぐに切る。家族に「こういう電話があった」と話せる関係を作っておく。悲しいことですが、これは今、電話を使うすべての人に求められている習慣なのだと思います。
正規の営業電話であっても、詐欺の電話であっても、受け取る側にできる防御はほとんど同じです。「知らない番号には、まず疑ってかかる」。この記事が、電話の受け取り方について考えるきっかけになれば嬉しいです。
ニセ警察詐欺をはじめとした電話型の詐欺の手口については、電話型の記事で整理しています。あわせてご覧ください。
(このコラムは、当サイト運営者「ふふ」個人の実体験・意見に基づくものです。当サイトは個人が運営する情報サイトであり、警察・自治体などの公的機関とは関係ありません。実際の被害に関するご相談は、警察相談専用電話「#9110」など公的な窓口へお願いします。)
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