当サイトの電話型の記事では、オレオレ詐欺・還付金詐欺・ニセ警察詐欺の3つを整理しました。この記事では、電話型の仲間でありながらまだ取り上げていなかった「預貯金詐欺」を掘り下げます。
令和8年上半期、被害が半分以下になった手口です
警察庁が発表した令和8(2026)年上半期の暫定値によると、預貯金詐欺の認知件数は482件(前年同期比-435件、-47.4%)、被害額は4.5億円(同-5.4億円、-54.5%)でした(出典:警察庁 SOS47 令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について)。
件数・金額とも前年から半分以下。当サイトで以前取り上げた「珍しく減っている」還付金詐欺(件数-17.3%・金額-3.4%)と比べても、下落率がはるかに大きいことが分かります。特殊詐欺全体が+18.3%・+51.7%という伸びを見せる中で、預貯金詐欺は数ある手口の中でも突出して減少している手口だといえます。
「キャッシュカードの取替」を口実に、家までやってくる手口
預貯金詐欺は、警察庁のSOS47のページで次のように説明されています。「県や市区町村などの自治体や税務署の職員などと名乗り、医療費などの払い戻しがあるからと、キャッシュカードの確認や取替の必要があるなどの口実で自宅を訪れ、キャッシュカードをだまし取る詐欺」(出典:警察庁 SOS47 預貯金詐欺)。
典型的な流れは、まず自治体職員を装って電話をかけ、「払い戻しがある」と接触したうえで、「キャッシュカードの確認・取替が必要」と信じ込ませます。その後、銀行協会などを名乗る別の人物から電話がかかってきて、「カードを取りに行く」「暗証番号を教えてほしい」と要求してくる、という2段階の仕掛けです。大手百貨店や家電量販店の店員、あるいは自治体職員を装い、「あなた名義のカードで買い物をした犯人がいる」「税金の還付がある」といった別の口実が使われることもあります。
当サイトの還付金詐欺の記事と発想は似ていますが、還付金詐欺が「ATMを操作させて振り込ませる」のに対し、預貯金詐欺は「カードそのもの、あるいは暗証番号を直接聞き出す」という点が異なります。電話だけで完結せず、自宅に来る、または現金の代わりにキャッシュカードそのものを狙うという点で、より直接的な手口です。
なぜここまで減ったのか。金融機関側の対策強化が背景にありそうです
令和7(2025)年9月12日、金融庁と警察庁は、全国銀行協会・全国地方銀行協会・全国信用金庫協会・ゆうちょ銀行など9つの金融機関関連団体に対し、預貯金口座の不正利用等防止に向けた対策強化を共同で要請しました。要請の内容には、口座開設時の不正防止・実態把握の強化、取引金額や頻度の妥当性にもとづく多層的な検知、詐欺の手口に着目した検知シナリオの充実、金融機関間の情報共有、警察への情報提供・連携強化などが含まれています(出典:金融庁「法人口座及びインターネットバンキングの利用を含む預貯金口座の不正利用等防止に向けた対策の一層の強化について」)。
この要請から令和8年上半期までは半年ほどの期間があり、金融機関側の対策が浸透してきたタイミングと、預貯金詐欺の急減が重なっている可能性があります。もちろん、この要請だけが理由だと断定はできませんが、還付金詐欺の記事でも触れたとおり、「対策が数字としてある程度効いている手口が存在する」ことを示す、もう一つの実例だと言えそうです。
見分け方は、シンプルな一言に集約されます
本物の金融機関や自治体の職員が、キャッシュカードを預かったり、自宅までカードを取りに来たりすることはありません。そして、暗証番号を電話や訪問時に尋ねることも絶対にありません。「カードを取りに行きます」「暗証番号を教えてください」という言葉が出てきたら、それだけで詐欺だと判断して間違いありません。
還付金詐欺と同様、「自治体や税務署からの、お金にまつわる電話」がそもそも詐欺の入り口になりやすいという点は共通しています。電話をいったん切り、自分で調べた自治体・金融機関の代表番号にかけ直して確認することが、もっとも確実な対策です。
訪ねてきた人が本物かどうか、その場で確認する方法
「自治体の職員です」「銀行協会の者です」と名乗る人が実際に訪ねてきたとき、その場で真偽を確かめる方法があります。まず、名刺や身分証の提示を求めてください。本物であれば、提示を渋ることはありません。そのうえで、名刺に書かれた電話番号ではなく、自分で調べたその自治体・金融機関の代表番号に電話をかけ、「今、そちらの職員を名乗る方が来ているのですが」と確認してください。本物の職員であれば、この確認作業を嫌がることはありません。相手が急かしたり、確認を拒んだりする様子を見せたら、その時点で詐欺だと判断してください。
なお、電話を経由せず、キャッシュカードそのものを別のカードとすり替えて持ち去る「キャッシュカード詐欺盗」という、預貯金詐欺とよく似た手口も存在します。この手口については、別の記事で詳しく取り上げる予定です。
家族の備えとして、できること
預貯金詐欺は、家に人が訪ねてくるという点で、電話だけの詐欺よりも家族が異変に気づきやすい面があります。
- 「自治体や銀行を名乗る人が家に来たら、まず追い返さず、家族に電話で確認する」というルールを決めておく。相手が本物であれば、後で確認しても問題は起きません
- キャッシュカードや通帳を、他人に絶対に渡さない・見せないという原則を、あらためて共有しておく。「確認のため」という理由であっても例外にしないことが重要です
まとめ:対策の効果が数字に表れている、もう一つの手口
預貯金詐欺は、令和8年上半期のデータで、特殊詐欺の中でもとりわけ大きく減少した手口でした。金融機関側の対策強化という、個人の注意だけに頼らない仕組みの効果が表れている可能性がある、という点は前向きに受け止めたいところです。ただし被害がゼロになったわけではなく、今も半年で4.5億円の被害が発生しています。「キャッシュカードを預かる・暗証番号を聞く」という言葉が出てきたら詐欺だと即断できるよう、ぜひご家族との会話の話題にしてみてください。
オレオレ詐欺・還付金詐欺・ニセ警察詐欺を含めた電話型全体の手口や、留守番電話・国際電話休止といった備えは、電話型の記事で詳しく整理しています。あわせてご覧ください。
(当サイトは個人が運営する情報サイトであり、警察・自治体などの公的機関とは関係ありません。記載内容は警察庁・金融庁等の公表資料をもとに整理したものです。実際の被害に関するご相談は、警察相談専用電話「#9110」など公的な窓口へお願いします。)
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