架空料金請求詐欺は、なぜ二つの顔を持つのか。ハガキ・SMSの手口を掘り下げる

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当サイトでは以前、サポート詐欺・フィッシングの記事で「サポート名目」の架空料金請求を取り上げました。実はこの「サポート名目」は、架空料金請求詐欺というもっと大きなカテゴリーの一部にすぎません。この記事では、残りの大部分を占める、ハガキ・封書・SMSを使った「昔ながらの架空請求」を掘り下げます。

架空料金請求詐欺は、二つの顔を持っています

警察庁が発表した令和8(2026)年上半期の暫定値によると、架空料金請求詐欺全体の認知件数は3,115件(前年同期比+244件、+8.5%)、被害額は74.6億円(同+6.1億円、+9.0%)でした(出典:警察庁 SOS47 令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について)。このうち「サポート名目」(パソコンの偽警告画面などを使う手口)は735件・8.3億円で、件数の23.6%・被害額の11.1%を占めます。つまり、件数ベースで見れば全体の4分の3以上、被害額ベースでも約9割は、サポート名目ではない別の手口によるものだということになります。

警察庁は架空料金請求詐欺を「未払いの料金があるなど架空の事実を口実とし金銭等をだまし取る(脅し取る)手口」と定義しています(出典:警察庁SOS47「架空料金請求詐欺」)。請求の手段はハガキ・封書・SMS・メールなど様々で、パソコンの画面を経由しない分、被害に遭う年齢層も手口もサポート詐欺とは少し違った広がり方をしています。

「特別送達」を装う、ハガキ・封書の手口

もっとも古くからある手口の一つが、裁判所からの正式な通知を装うハガキや封書です。「少額消費料金未納に関する訴訟最終告知のお知らせ」「総合消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」といった件名で届き、差出人には「法務省管轄支局 国民訴訟通達センター」「法務省管轄支局 民事訴訟管理センター」「法務省管轄支局 訴訟最終告知通達センター」などと記載されています。これらの団体は法務省とは一切関係のない、詐欺グループが作った架空の名称です(出典:法務省「法務省の名称等を不正に使用した架空請求により被害が発生しています」)。

差出人は「財産を差し押さえる強制執行を行う」などと脅し、記載された電話番号への連絡を促します。実際に連絡してしまうと、「弁護士を紹介する」といった名目でプリペイドカードなどを購入させ、金銭をだまし取る流れに持ち込まれます。

ここで知っておくと役立つのが、本物の裁判所からの訴状の送られ方です。訴状は「特別送達」と記載された、裁判所の名前が入った封書で送付され、郵便職員が名宛人に直接手渡すのが原則です。ハガキや普通の封書のように、郵便受けに投げ込まれることはありません。届いた通知がハガキや普通郵便であれば、その時点で偽物だと判断できます。

実在企業を騙るSMS・メールも、同時に増えています

ハガキ・封書に加えて近年目立つのが、実在する企業名を騙るSMSやメールです。消費者庁は、「訴訟○○センター等を名のり消費料金の件で訴訟を開始するというハガキや封書」だけでなく、「有名企業を名のり有料動画の未納料金の件で連絡が必要というSMS」も報告されていると注意喚起しています(出典:消費者庁「架空請求にご注意ください!」)。

代表的な例が、通信大手グループのNTTファイナンスを騙る手口です。同社によると、詐欺グループは「NTTファイナンス」「NTTファイナンスサポートセンター」などを名乗り、料金未払いを理由に電話やSMSで連絡してきます。国際電話特有の「+18」から始まる番号での着信が報告されているほか、同社が実際には送信していないSMSが届くケースもあるとして、公式サイトで名指しで注意を呼びかけています(出典:NTTファイナンス「NTTファイナンスを名乗る架空料金請求詐欺にご注意ください!」)。実在する企業の名前が使われている分、「本物かもしれない」と思わせる力は、正体不明のセンター名を名乗るハガキより強いといえるかもしれません。

大阪府内では、41人という組織的な摘発も

架空料金請求詐欺は、個人が単発で仕掛ける手口だけではありません。警察庁の同じ資料には、令和8年6月、大阪府内のマンションに置かれていた「打ち場」拠点(架空請求のメッセージを一斉送信する拠点)が摘発され、被疑者41人が特殊詐欺(架空料金請求詐欺)事件で逮捕されたことが記録されています(出典:警察庁 SOS47 令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について)。一つの拠点だけで40人を超える人数が関わっていたという事実は、架空料金請求詐欺が個人の思いつきではなく、役割分担された組織的な犯行として行われている実態を物語っています。

支払わせる手口も、進化しています

連絡してしまった後にどう支払わされるか、という部分にも変化が見られます。金融広報中央委員会の解説によると、架空請求の支払い手口には大きく二つの型があります。

一つは「電子マネー型」です。犯人は被害者に「コンビニで電子マネー(プリペイド)カードを購入して、カードに記載された番号を教えてほしい」と指示します。番号を伝えてしまうと、犯人はその場でカードの残高を使い切ってしまい、被害者が気づいた時にはほとんどの場合、取り返しがつきません(出典:知るぽると「架空請求の手口」)。

もう一つは、より巧妙な「収納代行利用型」です。犯人はあらかじめインターネットの商品購入サイトで商品券などを注文し、支払い方法として「コンビニ払い」を選択します。そのコンビニ払いの支払番号を被害者に伝え、「未納料金の支払いです」と偽ってコンビニで入金させます。被害者からすると「未納料金を払った」つもりでも、実際には犯人が注文した商品券などの代金を肩代わりさせられているにすぎません。犯人はその商品券を転売して換金します。被害者の口座から犯人の口座に直接お金が流れるわけではないため、後から足取りを追いにくいという特徴もあります。

どちらの型にも共通するのは、「電子マネーの番号」や「コンビニの支払番号」という、口頭やメモで伝えられる情報だけで金銭のやり取りが完結してしまう点です。銀行振込のように後から取引を止めたり照会したりすることが難しく、番号を伝えた時点でほぼ被害が確定してしまいます。

見分け方

架空料金請求詐欺には、共通する見分け方があります。

  • 心当たりのない請求には、書かれている連絡先に自分から連絡しない。消費者庁も「未納料金を請求されても心当たりがなければ決して相手に連絡しないようにしましょう」と明言しています。連絡してしまうと、電話番号などの個人情報を相手に知られ、それを元にさらに別の請求が来る可能性があるためです
  • 「今日中に」「至急」「裁判になる」といった急かす文言は、詐欺の典型的なパターンだと考える。本物の債権回収や裁判手続きは、いきなり最終通告から始まることはありません
  • 「コンビニで電子マネーを買って番号を教えて」「コンビニ払いの番号を伝えるので支払って」という依頼は、名目が何であれ詐欺だと考えてよい。正規の料金請求で、この方法が使われることはありません
  • 不安な場合は、請求元に直接連絡するのではなく、企業の公式サイトに載っている代表番号や、消費者ホットライン「188」(局番なし)、警察相談専用電話「#9110」に確認する

家族の備えとして、できること

架空料金請求詐欺は、電話一本で完結する還付金詐欺などと違い、ハガキ・SMS・メールという「文字の証拠」が手元に残る手口です。これは家族にとって、対策を立てやすい手口でもあります。

  • 「こんなハガキ・SMSが来たけど、これってどう思う?」と、家族にすぐ相談できる習慣を作っておく。1人で抱え込んで連絡してしまう前に、誰かに見せる一呼吸があるだけで被害を防げます
  • 離れて暮らす家族には、「見覚えのない請求は無視していい」ということをあらかじめ伝えておく。「無視して大丈夫なのか」という不安自体が、連絡させる動機になっているためです

まとめ:サポート詐欺と合わせて見えてくる、架空料金請求詐欺の全体像

架空料金請求詐欺は、パソコンの偽警告画面を使う「サポート名目」と、ハガキ・SMSを使う「昔ながらの架空請求」という、性質の異なる二つの手口を含むカテゴリーです。共通しているのは、実在しない団体や企業の名前を借りて不安をあおり、電子マネーやコンビニ払いという足のつきにくい方法で支払わせようとする点です。手段がパソコンであれポストであれ、「心当たりのない請求には、自分から連絡しない」という原則は変わりません。

パソコンの偽警告画面を使う手口の詳しい見分け方は、サポート詐欺・フィッシングの記事で解説しています。SNS・ネット型の詐欺全般についてはSNS・ネット型の記事もあわせてご覧ください。

(当サイトは個人が運営する情報サイトであり、警察・自治体・消費者庁などの公的機関とは関係ありません。記載内容は警察庁・消費者庁・法務省・NTTファイナンス等の公表資料をもとに整理したものです。実際の被害に関するご相談は、消費者ホットライン「188」や警察相談専用電話「#9110」など公的な窓口へお願いします。)

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