出張続きだった、あの頃の話
2000年代、外資系のカード会社に勤めていた頃、出張が多く、空港を利用する機会が今よりずっと多い時期がありました。当時、ニュースで「スキミング」という言葉を頻繁に見聞きしていたのを覚えています。カードの磁気情報を不正に読み取られ、偽造カードを作られてしまう、というあの手口です。
「なんとなく」警戒していた、あの頃の自分
正直に言うと、当時の自分はスキミングの仕組みをちゃんと理解していたわけではありませんでした。それでも、なんとなく怖かった。空港のロビーや搭乗待ちの列で、電子機器らしきものを鞄やポケットに近づけてくる人がいると、反射的に身構えていたのを覚えています。今思えば、根拠のある対策というより、漠然とした自己流の防衛反応でした。
実際、あの時代にカード犯罪は急増していた
あの頃の恐怖が的外れだったわけではないようです。警察庁が発表した平成16年(2004年)のカード犯罪の統計では、認知件数6,926件(前年比+2,064件)、検挙件数4,248件(前年比+1,035件)、検挙人員1,094人(前年比+262人)と、いずれも大きく増加していました。手口の内訳としては、加盟店の従業員によるスキミングや、加盟店に不正な装置を取り付けてカード情報を読み取る方法、海外でスキミングされたデータを購入する方法などが記録として残っています。暗証番号についても、運転免許証の生年月日から推測されたり、金融機関職員や警察官を装って聞き出されたりする手口があったとされています。自分が漠然と感じていた不安は、統計の上でも裏付けのある時代だったのだと、今回調べて改めて分かりました。
磁気カードという、そもそも脆弱な仕組みだった
調べてみると、スキミングという犯罪の可能性自体は1960年代後半から指摘されていたそうですが、1980年代に入って電子技術が急速に発達し、一般の技術者レベルでも複製カードが作れる状況になっていったといいます。初期の磁気カードは、暗証番号が磁気ストライプ上に平文(暗号化されていない状態)で書き込まれていたこともあり、今の感覚からすると驚くほど無防備な仕組みだった時代もあったようです。この弱点に対応するため、暗証番号を磁気情報から切り離したり、ICキャッシュカードへの切り替えを進めたりする対策が取られてきました。
私の「対策」は、正しかったのか
今振り返ると、電子機器を近づけてくる人を警戒する、という自分の直感は、あながち的外れではなかったのだと思います。非接触型の読み取り機器を近づけて情報を抜き取る、という手口自体は実在するものだからです。ただ、当時の統計を見る限り、実際に被害を生んでいた主な入口は、加盟店の従業員によるスキミングや、店舗の機器に不正な装置を仕込むといった、利用者の目にはまず見えない場所だったようです。目の前の怪しい動きだけを警戒していても、防ぎきれない構造だったのだと、今なら分かります。
今はICチップの時代。でも、なくなったわけではない
今のクレジットカードは、改正割賦販売法により2020年3月までにICチップ搭載型への切り替えが進められました。ICチップは情報が暗号化されているため、磁気ストライプだけのカードに比べてカード情報を盗み取ることが難しくなっているといわれています。Suicaなどの非接触ICカードの普及も含め、あの頃のような単純な複製は容易ではなくなりました。ただし、今でも磁気ストライプを併用しているカードは多く、完全にリスクがなくなったわけではありません。
そして、盗む方法が変わっただけで、「カード情報を狙う」という目的自体は今も変わっていません。今はスキミングという物理的な手口よりも、フィッシングメールで直接カード番号を入力させる、という手口の方が身近になっています。これは、あの頃の空港の警戒感が、今は届いたメールへの警戒感に置き換わっただけなのかもしれません。
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※本記事は運営者「ふふ」の個人的な経験・実感に基づくコラムです。
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