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当サイトの電話型の記事と、そこから掘り下げた還付金詐欺の記事では、「ATMで還付金は受け取れない」という基本を整理しました。この記事では、その還付金詐欺が実際にどんな言葉を使って近づいてくるかに焦点を絞ります。特に今、高額療養費・後期高齢者医療という二つの制度が同時に変わろうとしているタイミングだからこそ、知っておいていただきたい内容です。
「二つの医療費制度」が、今まさに変わろうとしています
まず、実際に何が変わるのかを整理します。一つは高額療養費制度です。厚生労働省によると、2026年8月から、医療費の伸びに応じて月ごとの自己負担上限額が所得区分ごとに引き上げられます。引き上げ幅は区分によって異なり、あわせて「年間上限」という新しい仕組みも設けられます。月々の自己負担が積み重なっても、年間の上限を超えた分は加入している保険者から還付を受けられる、という制度です。2027年8月には、所得区分をさらに細かく分ける第2段階の見直しも予定されています(出典:厚生労働省 高額療養費制度について)。
もう一つは後期高齢者医療制度です。令和8年度の保険料の賦課限度額(年間保険料の上限)は、医療分について80万円から85万円へ引き上げられます。この引き上げは、厚生労働省が社会保障審議会医療保険部会に示した資料(出典:厚生労働省保険局 第207回社会保障審議会医療保険部会資料3「後期高齢者医療の保険料の賦課限度額について」、令和7年12月12日)での検討を経て、「高齢者の医療の確保に関する法律施行令及び前期高齢者交付金及び後期高齢者医療の国庫負担金の算定等に関する政令の一部を改正する政令」(令和8年政令第4号)として令和8年1月21日に公布され、令和8年4月1日から施行されています(出典:社会保険労務士向け専門メディア「社会保険労務士PSRネットワーク」の解説記事、経済メディアLIMO(Yahoo!ニュース配信)の記事)。この引き上げの対象となる方は加入者全体の一部にとどまる一方、あわせて令和8年度から新たに子ども・子育て支援納付金の賦課分も設けられ、その限度額は2万1千円と正式に定められました。二つを合わせた上限額は87万1千円です。
つまり、「医療費の上限が変わる」「保険料の上限が変わる」という、本物のニュースが今まさに動いている最中です。そして、こうした制度の変わり目こそ、詐欺師が古くから狙ってきたタイミングでもあります。
「高額療養費の還付」という言葉は、すでに詐欺の中で使われていました
実は、「高額療養費」という言葉そのものは、2026年8月の改正が報じられるよりも前から、詐欺の電話の中で使われてきました。全国健康保険協会(協会けんぽ)が2025年3月28日に公表した注意喚起には、公的機関の職員などを装った電話で「5年前の過払い金」があるとして期限を強調し、ATMでの操作を求めてくる事例が紹介されています。この注意喚起の中では、還付の名目として「高額療養費」という言葉が使われた例があることも紹介されており、協会けんぽは医療費の還付についてATMの操作を求めることは絶対にないとしています(出典:全国健康保険協会「医療費等の還付を装った振り込め詐欺にご注意ください」、令和7年3月28日)。
この発表は、2026年8月改正のニュースが広まるより1年以上前のものです。つまり「高額療養費」という単語自体が、制度改正の話題性とは関係なく、以前から還付金詐欺の”定番の口実”として使われてきたことになります。今回の改正報道は、この定番の口実に、より説得力を与える材料を与えてしまう可能性がある、というのが当サイトの見方です。
「制度が変わったので」――過去にも繰り返し使われてきた口実
「制度が変わった」という言い方そのものも、実は目新しいものではありません。大阪府茨木市が公表している事例には、市役所職員を装った電話の中で「医療費制度が改正されたので、銀行口座を教えて欲しい」という言葉が実際に使われたことが記録されています(出典:茨木市「後期高齢医療・国民健康保険の医療費で戻ってくるお金があります」に関する注意喚起、2023年12月1日)。
東京都世田谷区の事例紹介にも、「医療費制度が見直され、医療費が戻る」という、ほぼ同じ趣旨の言葉が登場します(出典:世田谷区「医療費や保険料などの還付金詐欺にご注意ください」、2025年4月1日)。
さらに警察庁は2025年1月10日、後期高齢者医療制度の改正(令和4年10月の窓口負担割合の見直し)に便乗した詐欺への注意を、名指しで呼びかけています。この改正では、対象となる方に自治体等から高額療養費の口座登録のための申請書が郵送される予定になっていましたが、警察庁は、厚生労働省や自治体等が電話や訪問で口座情報登録をお願いすることや、キャッシュカードや通帳等をお預かりすること、そしてATMの操作をお願いすることは、いずれも「絶対にありません」と明記しました(出典:警察庁SOS47「後期高齢者医療制度改正」に関する詐欺に注意、2025年1月10日)。書類の郵送というごく事務的な手続きの予定情報までもが、詐欺への悪用を警戒されるほど狙われやすいということです。
各地の注意喚起を時系列に並べてみると
ここまでに挙げた発表を時系列で並べると、次のようになります。
- 2023年12月:茨木市が「医療費制度が改正されたので」という手口を公表
- 2024年4月:練馬区が「医療費や保険料の還付金があります」という手口を公表(出典:練馬区「医療費や保険料の還付金詐欺にご注意ください」)
- 2025年1月:警察庁が後期高齢者医療制度改正に便乗した詐欺へ注意喚起
- 2025年3月:全国健康保険協会が「高額療養費の還付」を名目にした詐欺の実例を公表
- 2025年4月:世田谷区が「医療費制度が見直され」という手口を公表
- 2026年4月:神奈川県相模原市が「医療費の還付金詐欺と思われる電話が続発」と公表(出典:相模原市の注意喚起)
- 2026年7月:神奈川県が「国保・後期高齢者医療の還付金等詐欺が発生しています」と更新(出典:神奈川県の注意喚起)
この3年弱の間、ほぼ切れ目なく、全国のどこかで同じ系統の注意喚起が出続けていることが分かります。実際の制度改正のニュースが増える時期に注意喚起も増える傾向は見えますが、大きな改正報道がなかった時期にも発生し続けている点も見逃せません。「制度改正」は詐欺師にとって数ある口実の一つであり、改正のニュースがあってもなくても、この手口自体は途切れず使われ続けているというのが実態に近いようです。
なぜ、この口実が繰り返し使われるのか
理由として考えられるのは、高額療養費や後期高齢者医療の制度そのものに「払いすぎた分は、実際にあとで戻ってくる」という本当の仕組みがあることです。この記事の冒頭で触れた年間上限の還付も、まさにその一例です。土台になっている話が事実である分、電話口で「今回の改正で、あなたにも戻ってくるお金がありますよ」と言われると、頭から作り話だと決めつけにくくなります。
加えて、自己負担限度額の所得区分や、賦課限度額といった制度の中身は、専門家でなければ細部まで正確に把握しづらいものです。「詳しいことは分からないが、何か変わったらしい」という程度の認識でいるところに、もっともらしい説明とともに電話がかかってくると、判断の材料が不足したまま話を進められてしまいます。ニュースで制度改正を目にしたばかりというタイミングは、警戒心を持ちやすい半面、「そういえば聞いたことがある」という妙な納得感を生みやすいタイミングでもある、という点に注意が必要です。
本物の還付は、電話やATMではやってきません
各地の注意喚起に共通しているのは、正規の手続きの説明です。相模原市は「事前の申請や通知があり、必ず書類で行います。突然、電話があってお金を返すことは絶対にありません」と明記しています(出典:前掲・相模原市の注意喚起)。警察庁も、口座情報の登録依頼やATM操作の依頼は「絶対にありません」と明言しています(出典:前掲・警察庁SOS47)。
この記事の冒頭で紹介した高額療養費の年間上限による還付も、仕組みとしては加入している保険者からの案内・申請にもとづいて行われるものです。少なくとも、電話一本で本人確認もそこそこにATMへ誘導され、その場で操作を指示されるという流れそのものが、正規の手続きとして存在しないという点は、どの制度についても共通しています。
電話を受けたら確認したい、3つのこと
- その場で口座番号や暗証番号を答えない。正規の手続きで、電話口の相手に口座番号を伝える必要が生じることはありません。
- 電話で伝えられた番号にかけ直さない。自分で調べた自治体の代表番号や、後期高齢者医療広域連合、協会けんぽの窓口に、あらためて自分からかけ直して確認してください。
- 「ATMに行ってほしい」「ATMを操作してほしい」と言われた時点で詐欺だと判断してよい。高額療養費でも後期高齢者医療でも、還付や保険料の手続きでATM操作を求めることは、どの発表でも例外なく否定されています。
離れて暮らす家族と、今のうちに決めておきたいこと
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今回取り上げた手口は、「役所からの正式な通知」を装う分、電話に出た本人だけでは違和感に気づきにくいという特徴があります。特に離れて暮らす親御さんの場合、こうした電話が来たこと自体を、あとから聞いて初めて知るケースも少なくありません。日常的に様子を確認できる仕組みがあれば、「最近、変わった電話はなかった?」と自然に話題にできる機会も増えます。見守りサービス・みまもりGPSのような仕組みも、制度改正が続くこの時期にあらためて検討してみる価値があります。
何かあったときに、頼れる窓口
- 警察相談専用電話「#9110」
- 消費者ホットライン「188」
- お住まいの市区町村の保険年金担当課(高額療養費・国民健康保険について)
- お住まいの都道府県の後期高齢者医療広域連合(後期高齢者医療について)
- 不審な電話でその場からすぐに助けを求めたい場合は、迷わず110番
まとめ:ニュースになるたびに、同じ手口が繰り返されてきました
高額療養費制度も後期高齢者医療制度も、今まさに本物の見直しが進んでいます。そして、こうした制度の変わり目のたびに、「制度が変わったので」「還付があるので」という同じ骨格の電話が、この3年ほどの間、途切れることなく各地で報告されてきました。今回の改正が特別に狙われやすいと決めつけることはできませんが、少なくとも「制度が変わった」という話題は、詐欺師にとって使い慣れた道具の一つであることは、これまでの記録からはっきり見えてきます。
「高額療養費」「後期高齢者医療」「制度改正」「還付」。この記事に出てきた言葉が電話越しに聞こえてきたら、まずは電話を切り、自分で調べた窓口にかけ直して確認する。それだけで、これまで報告されてきた手口のほとんどには対応できます。
電話型の詐欺全体の手口や、留守番電話・国際電話休止といった備えは、電話型の記事で、還付金詐欺そのものの統計的な特徴は還付金詐欺の記事で、それぞれ詳しく整理しています。あわせてご覧ください。
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