当サイトのSNS・ネット型の記事では、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺・サポート詐欺の3つをまとめて整理しました。この記事では、そのうちの一つ「SNS型ロマンス詐欺」だけを取り上げます。
先に取り上げたSNS型投資詐欺は被害額が1年でほぼ倍になっていましたが、ロマンス詐欺はまったく違う動きを見せています。表面上は落ち着いているように見えて、実は中身が大きく変わっている手口です。
被害額は、ほぼ横ばいです
警察庁が発表した令和8(2026)年上半期の暫定値によると、SNS型ロマンス詐欺の認知件数は2,509件(前年同期比+5件、+0.2%)、被害額は246.6億円(同+6.3億円、+2.6%)です(出典:警察庁 SOS47 令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について)。
SNS型投資詐欺が+126.0%、ニセ警察詐欺が+27.3%という伸び方をしている中で、ロマンス詐欺はほぼ横ばいです。当サイトの還付金詐欺の記事でも書きましたが、「増えていない」ことは「安心していい」ことと同じ意味ではありません。数字の中身を見ていくと、この手口も確実に姿を変えています。
お金の受け取り方が、「振込」から「暗号資産」に変わりつつあります
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。被害金の交付形態別に見ると、振込型は1,182件・90.2億円(ロマンス詐欺全体の47.1%・36.6%)で、前年同期比では件数-19.6%、金額-35.4%と大きく減少しています。
一方、暗号資産(仮想通貨)を直接送らせる暗号資産送信型は1,118件・141.8億円(同44.6%・57.5%)で、前年同期比+30.9%、金額+46.7%と伸びています。金額ベースで見ると、すでに暗号資産送信型が振込型を上回り、ロマンス詐欺における被害金の受け取り方の主役になっているのです(出典:同上)。
これは、SNS型投資詐欺との組み合わせが進んでいることを示していると考えられます。「恋愛関係を築いた相手から、一緒に投資をしようと持ちかけられる」という、ロマンス詐欺と投資詐欺のハイブリッド型が増えている中で、投資名目の暗号資産送金がロマンス詐欺の統計にも表れている、という見方ができます。
狙われているのは、SNS型投資詐欺と同じく50代・60代です
年代別では、50代が755件・83.5億円ともっとも多く、次いで60代が589件・70.3億円、40代が539件・46.9億円と続きます。50代・60代の2つの年代だけで、認知件数の53.6%、被害額の62.4%を占めています(出典:同上)。
離婚や死別、子どもの独立などをきっかけに、あらためて人とのつながりを求める時期と重なりやすい年代でもあります。「寂しさにつけ込む」という表現がよく使われますが、それは責められることではなく、誰にでも起こり得る自然な気持ちです。狙う側がその気持ちを利用している、という構図を正しく理解しておくことが大切です。
出会いの入り口は、マッチングアプリがもっとも多い
最初の接触に使われたツールは、マッチングアプリが753件(30.0%)ともっとも多く、次いでInstagramが486件(19.4%)、Facebookが449件(17.9%)、TikTokが284件(11.3%)と続きます。この4つのツールで、全体のおよそ8割を占めています(出典:同上)。
接触の手段としては、ダイレクトメッセージが2,252件と、全体の89.8%を占めます。SNSへの投稿やコメントからではなく、個別のメッセージから静かに始まるのがこの手口の特徴です。そして被害が発生する段階での連絡手段は、LINEが93.4%とほぼ独占しています。マッチングアプリやSNSで知り合い、早い段階でLINEに移行するという流れが、被害の典型的なパターンです。
なぜ暗号資産を要求されるのか
「一緒に投資をしよう」「暗号資産の方が今は有利」といった名目で、暗号資産取引所の口座開設や、購入した暗号資産の送金を求められるケースが増えています。銀行振込に比べて、暗号資産の送金は一度実行されると取り消しが難しく、追跡もしにくいとされています。犯人側にとって都合の良い受け取り方に、手口全体がシフトしていると考えられます。
「恋人になった相手と一緒に資産形成をする」という文脈は、SNS型投資詐欺の「みんなが儲かっている」という空気作りより、さらに疑いを持ちにくい状況を作り出します。信頼している相手からの提案だからこそ、暗号資産という聞き慣れない仕組みにも抵抗なく踏み込んでしまう、という構造です。
「恥ずかしさ」を乗り越えるための備え
ロマンス詐欺は、電話型やSNS型投資詐欺以上に、本人が「詐欺かもしれない」と気づいた後も、家族に打ち明けにくいという特徴があります。恋愛関係だと信じていたことへの恥ずかしさや、「だまされていた」という事実を認めたくない気持ちが、相談を遅らせてしまうためです。
- 「会ったことのない人との関係」自体を、責めずに話題にできる関係を普段から作っておく。「そういう出会いもあるよね」と、否定から入らない姿勢が、いざというときの相談のハードルを下げます
- 「投資や暗号資産の話が出たら、必ず誰かに相談する」というルールを、恋愛関係の有無にかかわらず家族の共通認識にしておく。SNS型投資詐欺の記事でも触れたとおり、これがもっとも効果的な歯止めになります
- もし気づいたときは、「気づけてよかった」という言葉から始める。だました側が悪いのであって、だまされた人が悪いわけではありません
見分け方は、SNS・ネット型の記事で紹介した内容が基本です
詳しい見分けるポイントはSNS・ネット型の記事で整理していますが、今回のデータを踏まえて、あらためて強調したい点があります。
- 実際に会ったことがない相手からお金や暗号資産の話が出た時点で、いったん立ち止まってください
- 「ビデオ通話はいつも都合が悪い」「会う約束をするといつも延期になる」という特徴は、依然として重要なサインです
- 「一緒に投資をしよう」「暗号資産口座を作ってほしい」という誘いは、恋愛感情がどれだけ深くても、詐欺を強く疑う合図です
ここまで読んで、気になったこと
Q. ビデオ通話はしたことがあります。それでも詐欺の可能性はありますか?
あります。自分の顔を別人の顔にリアルタイムで変換しながらビデオ通話ができる技術や、声を変換する技術が実際に存在し、ロマンス詐欺への悪用が報じられています(出典:INTERNET Watch「架空のイケオジになりすましてビデオ通話も!?『ロマンス詐欺』に悪用されるディープフェイク技術」)。現状では、横を向いたときや素早く動いたときに映像が乱れるといった限界もあるようですが、技術は年々向上しているとされています。ビデオ通話ができたという事実だけで、完全に安心できる時代ではなくなりつつあります。この点については、当サイトのAI悪用型の記事で別途詳しく扱う予定です。ビデオ通話ができたかどうかより、「会えない理由」が毎回変わる、お金や暗号資産の話が出てくるという点を重視してください。
Q. マッチングアプリは本人確認があるはずなのに、なぜ詐欺師が使えるのですか?
多くのマッチングアプリは、運転免許証などによる年齢確認・本人確認の仕組みを設けています。しかし、これは「実在する人物であること」を確認する仕組みであって、「プロフィールに書かれた職業や人物像が真実であること」までは保証しません。海外在住を装ったり、別人の写真を使ったりすることは、本人確認の仕組みをすり抜けたまま可能です。「アプリで確認済みだから安心」ではなく、実際にやり取りする中での行動(会おうとしない、お金や暗号資産の話をする)で判断する必要があります。
Q. 家族が「本気の恋愛だ」と言い張っていて、話を聞いてくれません
頭ごなしに否定すると、かえって心を閉ざしてしまいます。SNS・ネット型の記事でも紹介したとおり、「その人とはどうやって知り合ったの」と、興味を持つ姿勢でまず話を聞いてください。そのうえで、消費生活センター(188)などの公的な窓口へ、本人と一緒に相談に行くことをおすすめします。
まとめ:数字は横ばいでも、中身は投資詐欺化しています
SNS型ロマンス詐欺は、認知件数・被害額そのものはほぼ横ばいですが、被害金の受け取り方は振込から暗号資産へと明確にシフトしています。これは、ロマンス詐欺とSNS型投資詐欺が組み合わさりつつあることの表れだと考えられます。「恋愛感情を利用したうえで、投資や暗号資産へ誘導する」というハイブリッド化が、この手口の実態に近づいているのかもしれません。
数字の横ばいに油断せず、「会ったことのない相手からのお金・暗号資産の話」を、あらためてご家族との会話の話題にしてみてください。
SNS型投資詐欺・サポート詐欺を含めたSNS・ネット型全体の手口や、見分け方の詳細は、SNS・ネット型の記事で整理しています。あわせてご覧ください。
(当サイトは個人が運営する情報サイトであり、警察・自治体などの公的機関とは関係ありません。記載内容は警察庁等の公表資料をもとに整理したものです。実際の被害に関するご相談は、警察相談専用電話「#9110」など公的な窓口へお願いします。)
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