SNS型投資詐欺の被害額は、なぜ1年でほぼ倍になったのか。令和8年上半期のデータを深掘りしました

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当サイトのSNS・ネット型の記事では、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺・サポート詐欺の3つをまとめて整理しました。この記事では、そのうちの一つ「SNS型投資詐欺」だけを取り上げて、警察庁のデータをもう少し深掘りします。

結論から言うと、この手口はいまの特殊詐欺全体の中でも、被害の伸びがずば抜けて大きい手口です。数字を見ていきます。

被害額が、1年でほぼ倍になっています

警察庁が発表した令和8(2026)年上半期の暫定値によると、SNS型投資詐欺の認知件数は5,893件(前年同期比+3,020件、+105.1%)、被害額は797.9億円(同+444.9億円、+126.0%)です(出典:警察庁 SOS47 令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について)。

認知件数がおよそ2倍、被害額もおよそ2.3倍。当サイトで扱ってきた電話型の3手口(オレオレ詐欺+8.7%、還付金詐欺-3.4%、ニセ警察詐欺+27.3%)と並べると、この伸び率の異常さがよく分かります。特殊詐欺全体に占める被害額の割合も43.9%(前年同期比+14.5ポイント)に達しており、いまや特殊詐欺の被害額のほぼ半分が、この手口1つで占められている計算です。

既遂1件あたりの被害額も1,362.5万円(同+133.3万円、+10.8%)と、電話型のどの手口よりも高額です。1件あたり1,000万円を超える被害が、半年で数千件単位で発生しているということです。

狙われているのは、50代・60代が中心です

年代別に見ると、もっとも被害が多いのは50代で1,605件・199.3億円、次いで60代が1,518件・274.9億円です。この2つの年代だけで、認知件数の53.0%、被害額の59.5%を占めています(出典:同上)。

電話型の詐欺が70代・80代の被害が中心だったのに対し、SNS型投資詐欺は50代・60代という、現役で働いている、あるいは退職金を手にしたばかりの世代が中心です。SNS・ネット型の記事でも触れたとおり、「自分はITに詳しいから大丈夫」「昔から投資をしているから見抜ける」と考えている世代ほど、かえって狙われやすいという構造がここに表れています。

入り口として急増しているのは「広告」です

この手口が、どうやって最初に接触してくるのかも見ておきます。当初接触の手段は、バナー等広告が2,330件(同+1,451件、+165.1%)ともっとも多く、被害額でも374.8億円(全体の47.0%)を占めます。次いでダイレクトメッセージが1,698件、投稿(SNSへの投稿経由)が1,457件です(出典:同上)。

特に注目したいのは、バナー等広告の伸び率です。前年同期からおよそ2.65倍に増えており、当初接触手段の中でもっとも急激に増加しています。SNSを見ていて流れてくる「投資」「資産運用」をうたう広告が、この半年でもっとも危険な入り口になっているということです。

接触に使われたツール自体も、Instagramが1,403件(23.8%)ともっとも多いものの、X(旧Twitter)、LINE、TikTok、投資情報サイト、Facebook、YouTubeと幅広く分散しています。「知らないSNSだから安心」という考え方が通用しないほど、手口が広い範囲に浸透していることが分かります。

お金の流れは「振込」が主流。ただし暗号資産も無視できません

実際にお金がどう動くかも整理しておきます。振込型が4,084件(69.3%)・540.8億円(67.8%)ともっとも多く、そのうち73.4%はインターネットバンキング経由です。銀行の窓口に行くことなく、スマートフォンの操作だけで被害が完結してしまうケースが大半だということです。

一方で、暗号資産(仮想通貨)を直接送らせる暗号資産送信型も1,288件・128.4億円(16.1%)と、無視できない規模になっています。「儲かった利益を暗号資産で受け取れる」「暗号資産の方が手数料が安い」といった説明で、暗号資産の購入・送金に誘導されるケースが含まれます。銀行の振込であれば、金融機関の窓口やATMでの声かけによって被害を未然に防げる可能性がありますが、暗号資産の送金にはそうした「気づきの機会」が少ないという点も、この手口の厄介さの一つです。

なぜ、1件あたりの被害額がここまで大きくなるのか

既遂1件あたり1,362.5万円という金額は、一度の入金で発生する額ではありません。SNS・ネット型の記事でも触れたとおり、この手口では「出金しようとすると、手数料や税金の名目でさらに入金を求められる」という段階が繰り返し発生します。

ここに、人の心理的な弱さが利用されています。すでに数百万円を入金してしまった状態で「あと少しの手数料を払えば、これまでの分もまとめて引き出せる」と言われると、それまでの入金を無駄にしたくないという気持ちから、追加の入金に応じてしまいやすくなります。行動経済学で「サンクコスト(埋没費用)」と呼ばれる心理です。最初の一歩を踏み出させることよりも、この「引き返せなくなる仕組み」こそが、SNS型投資詐欺の被害額を押し上げている本質だと考えられます。

だからこそ、被害を最小限に抑える一番のポイントは「最初の入金をしない」ことに尽きます。少額であっても一度入金してしまうと、その後の判断が難しくなるという前提で、最初の段階での警戒がもっとも重要です。

気になること、先に答えておきます

Q. 投資アプリの画面に、本当に利益が増えているように表示されています。それでも詐欺なのですか?

はい、詐欺の可能性が高いです。SNS型投資詐欺で使われる投資アプリやサイトの多くは、犯人側が用意した偽物で、表示されている残高や利益は自由に書き換えられる数字にすぎません。実際の証券市場や取引所と連動していないケースがほとんどです。画面上の数字がどれだけ増えていても、それは実際にお金が増えている証拠にはならないと考えてください。

Q. LINEのグループに、実際に儲かっているという他の参加者のメッセージがたくさん流れてきます

そのグループの参加者も、犯人グループが用意したなりすましのアカウントである可能性が高いです。「みんな儲かっている」という空気を作り出すこと自体が、手口の一部です。グループの盛り上がりや参加人数の多さは、信頼できる根拠にはなりません。

気づきにくいからこそ、日常の会話が備えになります

SNS型投資詐欺は電話型と違って、離れて暮らす家族が異変に気づきにくいという特徴があります。電話のように会話を直接聞く機会がなく、すべてがスマートフォンの中で完結してしまうためです。

  • 「投資の話は、必ず家族に一度相談してから」というルールを、被害が起きる前に決めておく。SNS・ネット型の記事でも紹介したとおり、これがもっとも効果的な歯止めになります
  • 定期的に、家族の資産状況や利用しているアプリについて雑談レベルで話す機会を作る。「最近、何かいい投資の話とかない?」と、こちらから軽く聞いてみるだけでも、隠れた変化に気づくきっかけになります

見分け方は、SNS・ネット型の記事で紹介した内容が基本になります

手口の詳しい流れや見分けるポイントは、SNS・ネット型の記事で整理しています。ここでは、今回のデータを踏まえた要点だけ振り返ります。

  • 「元本保証」「必ず儲かる」「今だけの特別枠」という言葉が出てきたら、それは投資ではなく詐欺の合図です
  • SNSで見かけた広告や、知り合った相手から投資の話を持ちかけられること自体が、そもそも不自然な状況です
  • 投資の勧誘には、金融庁への登録が必要です。知らない相手からの投資話は、金融庁の登録業者一覧で確認してください
  • 暗号資産での入金・送金を求められた時点で、警戒を一段引き上げてください

特に、SNSで流れてくる広告そのものを警戒する意識は、これまで以上に持っていただきたいポイントです。フォローしている相手や友人からの発信ではなく、「広告」として表示されているものの中に、こうした投資詐欺への入り口が最も多く紛れ込んでいます。

まとめ:伸び率でも、被害の中心層でも、これまでの詐欺と違う手口です

SNS型投資詐欺は、被害額の伸び率で特殊詐欺全体を引っ張っている手口であり、狙われているのは高齢者だけでなく50代・60代の現役〜退職直後の世代です。広告を入り口に、スマートフォンの操作だけで数百万円から1,000万円を超える被害につながっています。

「うちの親は投資なんてしないから大丈夫」ではなく、「投資に関心のある年代の家族全員」が対象になり得る手口だということを、ぜひ話題にしてみてください。

ロマンス詐欺・サポート詐欺を含めたSNS・ネット型全体の手口や、見分け方の詳細は、SNS・ネット型の記事で整理しています。あわせてご覧ください。

(当サイトは個人が運営する情報サイトであり、警察・自治体などの公的機関とは関係ありません。記載内容は警察庁等の公表資料をもとに整理したものです。実際の被害に関するご相談は、警察相談専用電話「#9110」など公的な窓口へお願いします。)

→ 著名人の偽広告の手口・見分け方についても整理しています。

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